Classiques japonais avec furigana
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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Lisez 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) de 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 109 233 caractères · 223 écrans
出した。
『……どうもねえ、白藤さん、どうも僕はこの蛾とか蝶とかいうのが、世の中の何よりも恐ろしくてねえ……だれだって、そら、人にもよるけれど蛇がこわいとか、蜘蛛が怕いとか、芋虫をみると気が遠くなるとかいうけれど、僕にとって、蛾や蝶ほど怕い、恐ろしいものはないんですよ……そうでしょう。誰にだって、怕いものはあるでしょう……』
『そうですね、僕――僕にとっちゃ、まあ、悪いことを悪いと思わぬ奴が一番こわいがなァ』
山鹿は、その白藤の皮肉じみた言葉にも気づかぬように、可笑しなことには、まだ胸をどきどきと昂まらせながら、
『そうなんです。誰だって、心底から怕いものを一つは持っているんですけど、僕の場合、それが、あの蝶や蛾の類なんです。蛇や蜘蛛は、寧ろ、愛すべき小動物としか思いませんけど、これはどうも、そうはいきません、蛾――蛾――と思うと、もう不可ないんです。斯う頭の芯がシーンと冷めたくなって、まるで瘧のように、ぶるぶる顫えてしまうんですからね、まったく、子供だましみたいな話なんですけど、僕はこの恐怖のために、どんなに苦しんだか知れません――一度はあのブルキ細工の蝶の玩具を買って来て、自分を馴らそうとしたんですけど、それでも駄目なんです。