Classiques japonais avec furigana
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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Lisez 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) de 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 109 233 caractères · 223 écrans
行ったのは、もうお午をまわっていたが、勝手口のところには、疾うに冷め切った味噌汁を入れた琺瑯の壜と一緒に、朝食と昼食の二食分が、手もつけられずに置かれてあるのを見、
(留守かな――)
とも思ったが、案外、彼はすぐ声に応じて出て来た。
『ゆうべは失礼しました』
『いや、僕こそ、……どうぞ上って下さい』
私は、何気なく上ろうとして、一眼で見渡せるこの家の中の、余りの乱雑さに、思わず足が止ってしまった。
その、二間だけの座敷全体には、ずたずたに引裂かれた楽譜や五線紙が、暴風雨の跡のように撒きちらかされ、そればかりではなく、あの高価らしい漆黒のピアノまでが、真ン中から鉈でも打込んだように、二つにへし折れているのであった。
春日は、眩しげに顔を外向けて苦笑いをし、
『どうぞ、どうぞ……』
といい乍ら、楽譜の反古を掻分けて僅かばかりの席をつくってくれたが、
『いや、いいんですよ。今一寸用があるんで、又来ますから、……これをお返しに来たんです、じゃ、また晩にでも……』
私は懐中電燈を置くと、わざと座敷の中から眼を外らして何んにも見なかったように、さも忙しそうに、早々と崖を下りはじめた。