Classiques japonais avec furigana
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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Lisez 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) de 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 109 233 caractères · 223 écrans
『さ、すぐやって下さい』
春日は、平然としていった。
ネネは、感極まったように、手を堅く握りしめて胸のところに合せた儘、眉一つ動かさぬ春日の横顔を見守っていた。
私は、春日の血液が、様々な硝子器具を通って、木島の体へ送られて行くのをじっと見乍ら、フト、
(春日はジフィリスだったが……)
と思った、と同時に、愕然とした。春日は今、ネネの眼の前で復讐をしつつあるのだ。彼からネネを奪った男の体に、忌み嫌われた細菌の群が、真赤な行列をつくって移されているのだ……。
それをネネは心からの感謝をもって見ている……。
春日は、平然と、寧ろ、心地よさそうに眼をつぶっている。
そして、そのわずかばかり口元を歪めて笑った顔は、あの最初の邂逅の夜に、私を慄然とさせたのと同じ、鬼気を含んだ微笑であった――。
私はジッと見詰めている中に、握りしめた掌や脇の下からネトネトとした脂汗が滲出、眼も頭も眩暈みそうな心の動揺に、どうしてもその部屋を抜出さずにはいられなかった。
ともすれば、眼の前にちらつく、ネネの感謝の瞳が、たまらなかったのである。
×
木島は、この時宜を得た処置のためか、ぐんぐん恢復して軈て、東京に帰って行った。