Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

Lisez 恐怖王 (きょうふおう) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 66 038 caractères · 133 écrans

Aozora Bunko

「オヤ、この腕には何か字が書いてある。入墨の様ですね」

蘭堂は思わず浴室に踏み行って、不思議な生腕を覗き込んだ。

「恐……怖……王。アアやっぱりそうだ。あいつらの仕業だ。この腕には恐怖王と入墨がしてありますよ」

又しても悪魔の宣伝文字である。

「マア、……どこに?」

夏子は、これも我を忘れて、浴槽を飛び出して来た。八つの鏡に、全裸の美女のあらゆる向きの像が、艶かしく、イヤ寧ろ恐ろしく、クネクネと蠢いた。

実に驚くべきことが起ったのだ。うら若き未亡人の、豊かにも悩ましき全裸身が、今蘭堂の目の前にあった。湯に暖められて艶々と上気した肌、産毛の一本一本に光る、目にも見えぬ露の玉、全身を隈どる深い陰影の線、それが鏡の面に、或はうしろ向き、或は横向き、或は真正面の百千の像となって、ゆらめき動くのだ。

若しこれが通常の場合であったなら、夏子は恥しさに消えも入ったであろうし、蘭堂はいきなり眼を覆って逃げ出しもしたであろうが、今は常の時ではない。二人の目の前に生々しい人間の腕が転がっているのだ。恥しさも、気拙さも、はては情慾さえもが、どこかへ消し飛んでしまって、彼等の心は、不気味さと恐ろしさに、全く占領されていたのである。