Classiques japonais avec furigana
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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
Lisez 悪獣篇 (あくじゅうへん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 715 caractères · 73 écrans
」
この人の平生はかく盟うのに適していた。
「は、申します、先生、貴下だけなら申します。」
「言うて下さるか、それは難有い、むむ、さあ、承りましょう。」
「どうぞ、その、その前に先生、どこへか、人の居ない、谷底か、山の中か、島へでも、巌穴へでも、お連れなすって下さいまし。もう、貴下にばかりも精一杯、誰にも見せられます身体ではないんです。」
袖を僅に濡れたる顔、夢見るように恍惚と、朝ぼらけなる酔芙蓉、色をさました涙の雨も、露に宿ってあわれである。
「人の来ない処といって、お待ちなさい、船ででもどちらへか、」
と心当りがないでもなかった。沖の方へ見え初めて、小児の船が靄から出て来た。
夫人は時にあらためて、世に出たような目ざししたが、苫船を一目見ると、目ぶちへ、颯と――蒼ざめて、悚然としたらしく肩をすくめた、黒髪おもげに、沖の方。
「もし、」
「は、」
「参られますなら、あすこへでも。」
いかにも人は籠らぬらしい、物凄じき対岸の崖、炎を宿して冥々たり。
「あんな、あんなその、地獄の火が燃えておりますような、あの中へ、」
「結構なんでございます、」と、また打悄れて面を背ける。