Classiques japonais avec furigana
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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
Lisez 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 40 699 caractères · 78 écrans
殊にちかごろ花江の父が自分にひどく優しくしてくれるのも、自分と花江との運命をもうこっそり判断してしまっていて、そのため一層自分を親切にしていてくれそうにも思われ出して、由良はいよいよ何物かにつけ狙われているかのように身がひき締ってくるのを感じた。
ところが、由良がそんなに自分の運命についてばかり考え込んで、傍に信者のいることをまったく忘れているとき、急に信者は久し振りだからこれから一緒に湯へ這入ろうと云い出した。そう云われて初めて由良はあたりを見ると、なるほど二人はいつの間にか坂道を上って湯の傍まで来ているので、由良も着物を脱いで湯へつかったが、二人以外にも、真暗だのに舞踏病患者と横見をしたことのない女とが来ていて、舞踏病患者はびりびりと湯の中で慄え続けては、女の傍でときどき何かを飲み込むように奇声を発しながら波を立てていた。横見をしない女はこれは何を考えているのであろう、絶えず自分の二三間前方を見つづけたまま、いつものように誰にも物を云わず腕の上に組み合せた手の上で二つの親指だけをくるくると廻わせているだけなのである。すると、信者も間もなく湯へつかったときのいつもの習慣のままに、頭を湯の中へすっぽりとつけては出しつけては出し、鵜のような真似をしていたかと思うと、不意に水中で由良の足を握って舐め始めた。