Classiques japonais avec furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Lisez 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) de 室生 犀星 (むろうさいせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 116 728 caractères · 231 écrans
それは秋で私は父死すという電報の来ている下宿にかえって、その晩、故郷に向いて立ち、十日程して帰京すると千駄木町の通りを行き、思い返して国から持参した吉田屋物の九谷の大皿を抱えて、アトリエの前に立ったが、その日は都合よく光太郎自身が現われ、かれの書斎でしばらく話しておみやげの皿を置いて帰った。私はこんなに人を訪ねるに執拗であったためしも尠ないし、九谷の大皿まで何の気でもっておべっかを尽したのか、そのもとをさぐると高村光太郎の友人になりたかったからである。私みずからを救うのはもちろんだが、光太郎のアトリエにしげしげと通ってあわよくば、大雑誌『スバル』に詩の原稿をすいせんして貰いたい下心があったからであった。けれども人に贈物をしたくても出来ない人間が、それをなし遂げたときには精神的にもうがっかりして、私は光太郎をまたと訪ねる気がしなくなっていた。詩人が贈物で詩を紹介して貰うことに気がさしていたし、ツメタイ眼をみることがいやだったからだ。しかし私は独居の下宿の部屋でときどきあれは誰だったかと、うかぶたくさんの女の人の顔をおもい上げるとき、このツメタイ眼がツメタイために美しく映じてくるのを、怖れた。