Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるおんなのしゅき

或る女の手記

豊島 与志雄

Lisez 或る女の手記 (あるおんなのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 447 caractères · 37 écrans

Aozora Bunko

ただ低くお辞儀を返したことだけを覚えている。お坊さんが向うへはいってしまってから、私はとうとう其処につっ伏してしまった。

私が漸く我に返ると、お母さんは心配そうに私の顔を覗き込んでいられた。和尚さんも其処に坐っていられた。私はただ急に気分が悪くなったことだけ答えた。

暫くして心が少し静まると、私のうちには、自暴自棄な勇気がむらむらと湧いてきた。自分の運命と取組んでやれというような気がしてきた。私は俄に身を起して、もうすっかり直ったと云った。そして快活に話しだした。お母さんや和尚さんの驚きなんかには頓着しなかった。自分でも喫驚するほど元気に振舞った。そうしながらも、私は思慮をめぐらして、先刻のお坊さんのことを聞き糺した。すると、……私はほんとにどうかしていたのだ! そのお坊さんは、四五年も前からこのお寺に養子に来てる人で、和尚さんの後を継ぐべき人だったのである。そして非常に立派な人だとか。

私は茫然としてしまった。けれどもまだすっかりは疑いがとけなかった。先刻の失礼をお詑びしたいと云って、お坊さんをまた呼んで貰った。そして、はいって来たお坊さんの顔を見ると、それは彼とは似寄りの点もない人だった。