Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるおんなのしゅき

或る女の手記

豊島 与志雄

Lisez 或る女の手記 (あるおんなのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 447 caractères · 37 écrans

Aozora Bunko

私は自分が自分でないような心地をしながら、家へ帰った。そして、それが初まりだった、私が彼の幻影にひどく苦しめられたのは!

その晩、私は妙に息苦しい思いで眼を覚した。室の中に陰気な靄が立ち罩めていた。襖の彼方に、彼が立っていた。私の方をじっと見つめていた。私にはそれがはっきり分った。私は蒲団を頭から被ろうとした。けれども手足が鉄の鎖ででも縛られたように、身動きさえ出来なかった。……やがて彼はすーっと襖を開けて、室の中にはいって来た。そして私の方を鋭い眼で見つめながら、頭をこっくりこっくり動かして、私の寝てるまわりをぐるぐる歩き初めた。私は眼をつぶっても、その姿がはっきり見えた。息がつまってしまった。歯を喰いしばって身を※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)きながら、飛び起きてやった。……それがやはり夢だったのだ。彼の幻は消えて、室の中には五燭の電灯がぼんやりともっていた。私はぶるぶると震え上った。いきなり大きな声を立ててお母さんを呼んだ。お父さんもお母さんと一緒にやっていらした。私は大きな溜息をついて、蒲団の上に倒れてしまった。そういうことが三日置き位には起った。