Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lisez 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 279 caractères · 86 écrans
図々しいにも程があるわ。あなたはそれでも恥しくないんですか。」
「いや僕は会社に行って遅くまで用をしていたんだ。」と私は臆面もなく云った。「嘘だと思うなら、会社に電話で聞いてみるがいい。」
「いいえ、嘘です、嘘です。」
そして彼女はどうしても聞き入れなかった……がそれは後のことである。
私は俊子がいないのにほっと安心すると共に、また一方には不安にもなりながら、二階に上って、飜訳の原稿や五六通の書信を片付けたり、書棚の中の書物を並べ直したり、机の抽出の中のこまごました物を見調べたり、額縁の曲ってるのを掛直したり――何のためにそんな下らないことをしたのだろう!――そして合間合間には腕を組んで室の中を歩いたりしてるうちに、今迄甞て知らない種類の焦慮に襲われてきた。「晩に河野さんの所へでもいらっしゃるがいいわ、」という光子の言葉から糸を引いて、俊子がいつも河野さんに金を借りにいったこと、彼女が結婚前から――子供の時から――河野さんと往来していたこと、河野さんの性情や私達の冷かな夫婦生活、そんなことが一時に忌わしい影を拵えて、私の頭に映ってきた。思うまいとしてもまたいつしかその方へ考えが向いていった。