Classiques japonais avec furigana
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おしえのきせき
押絵の奇蹟
夢野 久作
Lisez 押絵の奇蹟 (おしえのきせき) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 58 749 caractères · 114 écrans
その押絵は、その春の末、博多で名高い山笠のお祭りのある前に櫛田神社の絵馬堂にあがりました。その額はやはり柴忠さんの工夫で厚い硝子張りの箱に封じた上から唐金の網に入れて、絵馬堂の東の正面に、阿古屋の琴責めの人形と並んで上がったのですが、檜の香気のために、何もかも真白になる程色が落ちている阿古屋の人形と見比べますと、ホントに眼が醒めるようで、一時は絵馬堂が人で一パイになるくらい評判が立ったそうで御座います。
するとその評判をお聞きになったものかどうか存じませぬが、お父様は、忘れもしませぬ明治二十四年の五月二十四日のお昼前に、
「俺はちょっとその見物人を見て来る」
と仰有って新しい飛白の着物にいつもの小倉の角帯を締めてお出かけになりました。
その日は太陽がカンカン照っておりましたが、お父様は、
「雨になるかも知れぬ」
と云って大きな白ケンチウ張りの洋傘を持って、竹細工の山高帽を冠って、中足高をお穿きになりました。私も行きたいと思いましたがお父様が、
「人が大勢居ると危ないから又連れて行ってやる。土産を買うて来てやるから待っとれ」
と云い棄てて川端を水車橋の方へお出でになりました。