Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

すてご

捨児

芥川 竜之介

Lisez 捨児 (すてご) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 695 caractères · 10 écrans

Aozora Bunko

すると女は不相変畳へ眼を落したまま、こう云う話を始めたそうです――

「ちょうど今から五年以前、女の夫は浅草田原町に米屋の店を開いていましたが、株に手を出したばっかりに、とうとう家産を蕩尽して、夜逃げ同様横浜へ落ちて行く事になりました。が、こうなると足手まといなのは、生まれたばかりの男の子です。しかも生憎女には乳がまるでなかったものですから、いよいよ東京を立ち退こうと云う晩、夫婦は信行寺の門前へ、泣く泣くその赤子を捨てて行きました。

「それからわずかの知るべを便りに、汽車にも乗らず横浜へ行くと、夫はある運送屋へ奉公をし、女はある糸屋の下女になって、二年ばかり二人とも一生懸命に働いたそうです。その内に運が向いて来たのか、三年目の夏には運送屋の主人が、夫の正直に働くのを見こんで、その頃ようやく開け出した本牧辺の表通りへ、小さな支店を出させてくれました。同時に女も奉公をやめて、夫と一しょになった事は元より云うまでもありますまい。

「支店は相当に繁昌しました。その上また年が変ると、今度も丈夫そうな男の子が、夫婦の間に生まれました。勿論悲惨な捨子の記憶は、この間も夫婦の心の底に、蟠っていたのに違いありません。