Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りゃくだつせられたるおとこ
掠奪せられたる男
豊島 与志雄
Lisez 掠奪せられたる男 (りゃくだつせられたるおとこ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 398 caractères · 48 écrans
秀子が何処からそんなことを聞き噛ってきたかということよりも、そういうことを丸で自分の掌の中のことをでも語るような調子で云ってのけるのを、訳が分らなくなった。彼女のうちには一体何があるのか? それを覗こうとすると、ただ大きい空洞のような気がした。それは凡てを呑みつくそうとしている。もはや其処には「消化」も「選択」も無い。ただあるものは無限の深い洞穴のみである。而も彼女は、ブーケ・ダムールの誘惑的な香りを発散させながら、嬌艶なしなを作って、微笑みつつ高いぽくりの軽やかな音を立てて歩いている。大きく束ねた髪に好んで一つ※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)した小形の翡翠の簪がぬけ落ちそうにするのを、彼女は細い指先を挙げては時々※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)し直した。彼女の指は細くしなやかで、朝顔の蔓のようにすぐに物に絡みつくかと思われるほどであった。ただ爪は少し平たくて(それは生れのよくないことを示していた)不恰好であったが、その色は赤くすいて見えて美しかった。
軽い風はいつのまにか止んで、重く空気の澱んだむし暑い晩だった。