Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

にぎったて

握った手

坂口 安吾

Lisez 握った手 (にぎったて) de Sakaguchi Ango (坂口 安吾) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 293 caractères · 23 écrans

Aozora Bunko

「本心て、なにさ」

「ボクを永遠の大学生にしたいのかなア」

「そうよ。それが好きなのよ。でもね。来年もいまの気持とは限らないでしょ。だから、本心って言葉は無理みたいね。いまの心。いまだけよ」

落第すれば、まだ当分は脈があるらしい様子でもあった。松夫はもう二度と誰とも恋ができないような予感がして仕方がなかった。最近に至って特にそうだ。早い話が、彼はもはや誰の手を握る勇気も起るまい。誰に話しかけることもできない。目を上げる勇気すらもない。恋し得た最後の女、そして結局一生に一人の女が綾子のような気がする。完全だの純粋などという愛や恋のことではなく、あらゆる打算のあげくが、この女一人、である。最後の一文という乞食の愛情である。赤貧のドン底だ。無一物。ギリギリのたった一ツ。それにしては綾子は美人だ。映画館で拾った女のようではなかった。それだけに胸が痛む。今にして思えば、映画館で拾われたのは松夫の方であった。拾われるのも、これが最後であろう。どうしても綾子を放せない気持が強まるばかりであったが、その気持を強く押しつける勇気は衰える一方だ。自分の中にいかなる実力の存在も信じることができなくなってしまったからである。