Classiques japonais avec furigana
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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
Lisez 支倉事件 (はせくらじけん) de 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 204 697 caractères · 406 écrans
し、どうでも支倉のやった事を知っているに違いないと云うので、刑事達は交る/″\厳重に彼女を責め立てたのだった。が、事実は彼等の予期に反して、彼女の口からは何事も聞く事が出来なかった。どうせ夫の大事を軽々しく喋る女ではないと云う見込ではあったけれども、こうまでしても口を開かないのは、実際に彼女は何事も知らないと認めるより仕方がなかった。
「ちょっ」
三日目には流石の根岸刑事もとうとう匙を投げた。
「強情な女だ。だが実際知らないらしい」
「知らない筈はないと思うが」
渡辺刑事は口惜しそうに云った。
「実際知らないのかなあ」
かくて静子の口から分ったのは小林貞の暴行事件の真相だけだった。
話は三年前に溯る。
真白に咲き乱れた庭の沈丁花の強烈な香が書斎に押寄せて来て、青春の悩みをそゝり立てるような黄昏時だった。若い牧師神戸玄次郎氏は庭に向った障子を開け放して、端然と坐って熱心に宗教書を読み耽っていた。
机の上の瑞西から持って帰った置時計はチクタクと一刻千金と云われる春の宵を静に刻んでいた。
折柄襖が静かに開いて夫人が淑かに現われた。
「あの支倉さんが是非お目にかゝりたいと仰有るのですが」