Classiques japonais avec furigana
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しゃこう
斜坑
夢野 久作
Lisez 斜坑 (しゃこう) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 977 caractères · 39 écrans
落ち付いて皆の話が耳に止まるようになると、一も二もなく皆の云う通りの事実を信じて、驚いて、呆れて、茫然となっているばかりであった。
そんな状態であったから結局、出来事の原因は解らないずくめになってしまって、福太郎の遭難も自業自得といったような事で、万事が平々凡々に解決してしまった。その後で他所から帰って来た炭坑医も、福太郎の疵があんまり軽いのを見て笑い笑い帰って行った位の事だったので、集っていた連中もスッカリ軽い気持になって、ただ無闇と福太郎の運のいいのに驚くばかりであった。そうして揚句の果は、
「お前があんまり可愛がり過ぎるけんで、福太郎どんが帰りを急ぐとぞい」
とお作が皆から冷やかされる事になったが、流石に海千山千のお作もこの時ばかりは受太刀どころか、返事も出来ないまま真赤になって裏口から逃げ出して行った位であった。
しかしお作はそれでも余程嬉しかったらしい。その足で飯場から酒を二升ばかり提げて来て、取りあえず冷のまま茶碗を添えて皆の前に出した。すると又、それに連れて済まないというので、手に手に五合なり一升なり提げて来る者が出て来る。自宅の惣菜や、乾物の残りを持込んで、七輪を起す女連も居るという訳で、何や彼や片付いた十一時過になると福太郎の狭い納屋の中が、時ならぬ酒宴の場面に変って行った。