Classiques japonais avec furigana
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きられたさに
斬られたさに
夢野 久作
Lisez 斬られたさに (きられたさに) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 352 caractères · 41 écrans
ちゃんと考えていたのであろう。若侍がスラスラと礼の言葉を陳べたので、思い上っていた平馬は、すこしうろたえた。
「いや。天晴れな御心懸け……あッ。これは却って……」
と恐縮しいしい茶合羽と菅笠を受取った。
「お羨しいお手の内で御座いました。お蔭様でこの街道の難儀がなくなりまして……」
「……まことに恥じ入りまするばかり……」
言葉低く語り合ううちに松原を出た。そうして二人ともタッタ今血を見た人間とは思えぬ沈着いた態度で、街道の傍に立止まった。
明るい処で向い合ってみると又、一段と水際立った若侍であった。外八文字に踏開いた姿が、スッキリしているばかりではない。錦絵の役者振りの一種の妖気を冴え返らせたような眼鼻立ち、口元……夕闇にほのめく蘭麝のかおり……血を見て臆せぬ今の度胸を見届けなかったならば、平馬とても女かと疑ったであろう。
その若侍は静かに街道の前後を見まわしながら、黄色い桐油合羽の前を解いた。ツカツカと平馬の前に進み寄って、恭々しく、頭を下げた。
「……手前ことは江戸、下六番町に住居致しまする友川三郎兵衛次男、三次郎矩行と申す未熟者……江戸勤番の武士に父を討たれまして、病弱の兄に代って父の無念を晴らしに参りまする途中、思いもかけませぬ御力添えを……」