Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

だんがいのさっかく

断崖の錯覚

黒木 舜平

Lisez 断崖の錯覚 (だんがいのさっかく) de 黒木 舜平 (くろきしゅんぺい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 483 caractères · 26 écrans

Aozora Bunko

私たちは、いつまでもそうして歩いていたかった。雪は旅館の裏山へ私を誘った。私も、よろこんでついて行った。くねくね曲った山路をならんでのぼりながら、雪は、なにかの話のついでに、とつぜん或る新進作家の名前で私を高く呼んだ。私は、どきんと胸打たれた。雪の愛している男は私ではない。或る新進作家だったのだ。私は目の前の幸福が、がらがらと音をたてて崩れて行くのを感じたのである。ここで私は、すべてを告白してしまったら、よかったのである。すくなくとも雪を殺さずにすんだのかも知れない。しかし、それができなかった。そんな恥かしいことは死ぬるともできなかった。私はおのれの顔が蒼ざめて行くのを、自身ではっきり意識した。

雪も流石に、私のそんなうち沈んだ様子に不審をいだいたらしかった。

「どうなすったの? 私、判るわ。いやになったのねえ。あなたの花物語という小説に、こんな言葉があったわねえ。一目見て死ぬほど惚れて、二度目には顔を見るさえいやになる、そんな情熱こそはほんとうに高雅な情熱だって書かれていたわねえ。判ったわよ。」

「いや、あれは、くだらん言葉だ。」

私は、あくまでも、その新進作家をよそわねばならなかった。