Classiques japonais avec furigana
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しんねんざっそ
新年雑俎
寺田 寅彦
Lisez 新年雑俎 (しんねんざっそ) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 034 caractères · 6 écrans
アルコールで消毒はされるかもしれないがあまり気持の好いものではない。
屠蘇と一緒に出される吸物も案外に厄介なものである。歯の悪いのに蛤の吸物などは一番当惑する。吉例だとあって朝鮮の鶴と称するものの吸物を出す家があったが、それが妙に天井の煤のような臭気のある襤褸切れのような、どうにも咽喉に這入りかねるものであった。
御膳が出て御馳走が色々並んでも綺麗な色取りを第一にしたお正月料理は結局見るだけのものである。
二、三軒廻って吸物の汁だけ吸うのでも、胸がいっぱいになってしまう。そうして新玉の春の空の光がひどく憂鬱に見えるのである。
子供の時分の正月の記憶で身に沁みた寒さに関するものは、着馴れぬ絹物の妙につめたい手ざわりと、穿きなれぬまちの高い袴に釣上げられた裾の冷え心地であった。その高い襠で擦れた内股にひびが切れて、風呂に入るとこれにひどくしみて痛むのもつらかった。
今はどうか知らないが昔の田舎の風として来客に食物を無理強いに強いるのが礼の厚いものとなっていたから、雑煮でももう喰べられないといってもなかなかゆるしてくれなかったものである。尤も雑煮の競食などということが普通に行われていた頃であるから多くの人には切餅の一片二片は問題にならなかったかもしれないが、四軒五軒と廻る先々での一片二片はそうそう楽なものでは