Classiques japonais avec furigana
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しんしゃくしょこくばなし
新釈諸国噺
Lisez 新釈諸国噺 (しんしゃくしょこくばなし) de Dazai Osamu (太宰 治) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 93 562 caractères · 179 écrans
吉野山 (大和) 万の文反古、歿後三年刊行
貧の意地
むかし江戸品川、藤茶屋のあたり、見るかげも無き草の庵に、原田内助というおそろしく鬚の濃い、眼の血走った中年の大男が住んでいた。容貌おそろしげなる人は、その自身の顔の威厳にみずから恐縮して、かえって、へんに弱気になっているものであるが、この原田内助も、眉は太く眼はぎょろりとして、ただものでないような立派な顔をしていながら、いっこうに駄目な男で、剣術の折には眼を固くつぶって奇妙な声を挙げながらあらぬ方に向って突進し、壁につきあたって、まいった、と言い、いたずらに壁破りの異名を高め、蜆売りのずるい少年から、嘘の身上噺を聞いて、おいおい声を放って泣き、蜆を全部買いしめて、家へ持って帰って女房に叱られ、三日のあいだ朝昼晩、蜆ばかり食べさせられて胃痙攣を起して転輾し、論語をひらいて、学而第一、と読むと必ず睡魔に襲われるところとなり、毛虫がきらいで、それを見ると、きゃっと悲鳴を挙げて両手の指をひらいてのけぞり、人のおだてに乗って、狐にでも憑かれたみたいにおろおろして質屋へ走って行って金を作ってごちそうし、みそかには朝から酒を飲んで切腹の真似などして掛取りをしりぞけ、草の庵も風流の心からではなく、ただおのずから、そのように落ちぶれたというだけの事で、花も実も無い