Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
ぎょッとした顔のまま同時に黙ってしまった中で、
「お元気になったわ三島さん。またあたしに靴を脱げと仰言るんじゃありません?」と真紀子ひとりは三島から身を引くように反らしてからかった。
「はははは、靴か。靴脱ぎなさいよ。どうもあ奴を覚えてられると、僕は羞しゅうて。」と云いながらもう三島はしきりと真紀子の靴の方へ身を跼めて眺めた。若者たちを煽動して鬱を晴らしていた沖も、「これや、今夜は無事にはすまぬ。」と思う様子で少し不機嫌になって来た。
アルザス料理から一同は外へ出ると、河風にあたろうと云うので少し下ったケエドルセイの通りをセーヌ河に添って歩いた。ここは人通りは誰もなく瓦斯灯だけ鬱蒼とした樹の間から光っていた。真紀子は河岸に並んだ古本屋の閉った緑の箱の間から欄壁に飛び上ろうとする三島を絶えず心配して、「危いわね。落ちついてらっしゃいよ。」と袖を曳くように彼の腕を掴んで歩いた。三島は鳥を追うような恰好で、「ほう、ほう。」と夜空に黒黒と続いたプラターンの大樹を仰いで叫んだと思うと、真紀子の腕から脱け出そうとしてまた引き据えられた。それでも三島は片足を高く上げつつずんずん一人先の方へ進むので、いつの間にか真紀子も一行から放れて先になった。