Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
そのとき急に矢代は後頭部に生ま暖い触りを感じた。何気なく仰ぐと千鶴子が黙ってソファの後ろに立っていた。
「真紀子さんまだ?」
前に廻った千鶴子はソアレの膝を一寸摘んで矢代の傍に坐った。真紀子と違う香水の匂いが鮮やかな水流を矢代の頭の中に流し込んだ。
「ピエールさん抛っといてもいいの?」
「ええ、そう云って来たの。お友達がいるからって。」
千鶴子はほッと吐息をもらして部屋の中を眺めていたが、
「真紀子さんどうなすったの?」とまた訊ねた。
「高さんて船の中にいた中国人あったでしょう。ダンスの上手な。――あの人と下で会ったまま戻って来ないんですよ。」
「そう。あたしに怒ってらしって?」
「いや、僕にだ。」
「あたしも怒られるかしらと思ったんだけれど、でもね。」
「まア、少し間違えた。」
矢代はそう云うと、滅多に出来そうもないと思っていた千鶴子の片腕を歩く時のように自分の腕の中へ巻き込んだ。千鶴子は後ろのドアの方を向いてから顔を矢代の肩へ靠らせたが、また身を起すと足を組み替え一層重くもたれ直したので、首飾の青石がかすかに鳴った。二人は暫くそうしたまま舞台を見ていた。悩むマルグリットの衣裳のうねりにつれて、無数の宝石が全身の上で光りを絶えずきらきらと変えていた。