Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

「あなた、ほんとにホテルへ帰ったら、お電話して下さいね。」と云った。

そして、また矢代の横へ来て坐ると、彼の手をもう一度自分の膝へ乗せ、

「いい、行って来ても?」と訊ねた。

「まあ、困るがやむを得ん。」

矢代はいっかピエールが千鶴子の手に接吻したのはどちらの手だったかしらと、ふとそんなことを考えぴしりと手の甲を一つ打った。

「じゃさようなら。」

千鶴子が立って出て行こうとしかけたとき矢代は急に呼びとめた。

「悲劇にしないでくれ給え。大丈夫ですか。」

千鶴子はドアの間へ半ば入れた身体をひねって黙って笑いながら頷いた。矢代は千鶴子がいなくなってから自分も立って鏡に姿を映してみた。なるほど少し肩が崩れているなと思い、ネクタイの歪みを直したり、白い胸板を正したりしながら、とうとう自分も日ごろ軽蔑していた旅愁にやられてしまったと思った。事実、自分に攻めよせて来たのは千鶴子にちがいなかったが、千鶴子も自分もパリに総がかりで攻めよられたことにもまた間違いはなかった。これが日本へ近よって行く度びに一皮ずつ剥げ落ちていくとしたら、実際は、自分たち二人は今は夢を見ているのと同じだと思うのであった。