Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

」

「まだです。きっと遅くなるでしょう。」

「心配ね。あたし、お礼に行かなくちゃと思うんですけど、どうしたらいいかしら。」

「いや、その御心配はいらないと思いますね。」

「何の御心配だ。」と久慈はバスの中から矢代に云った。

電話で話をするにも背後の久慈に気がねするだけの落ち着きを、今は矢代も取り返していた。

「久慈が何だか呶鳴ってますから、今夜はもう御ゆっくりお眠みなさいよ。」

「じゃ、お眠みなさい。また明日ね。」

「さようなら。」

矢代は話が切れても何んとなく千鶴子がまだそのままいそうに思われたので、

「良ろしいか、切りますよ。」と云ってみたがもう電話は切れていた。

矢代は拍子脱けのしたような気持ちで久慈がバスの中で湯の音をさせている間、椅子によりかかっていた。丁度腰から上が鏡に映るような配置の椅子のために動かずとも顔がよく見えた。彼はその夜のオペラでの出来事を久慈に云ってしまおうかと考えたが、しかし、前から恋愛というものをそんなに高く価値づけることの出来ない性質の自分だと思った。その自分があのような情緒に浸った結果を臆面もなく報告することは、まだ当分の間ひかえた方が良いとも思うのだった。