Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

しかし、こんなに婦人の部屋のどこへでも無遠慮に踏み込んで行くことの出来るのも、来た船中のときから一緒だった気軽さのためとも思った。それにしても、その気軽さが却って二人の間をそれ以上の親密さに引き入れぬ妨げともなっているのは、今まで知らなかった互の隙のように思われて来るのだった。

「どうもこの部屋へ来ると、自分の部屋のような気がして困るな。まだこれや、僕たち旅心がぬけないんだね。」

「あたしもそうなの。他人の部屋と自分の部屋と同じように見えるのよ。でも、何んだかこんなの淋しいわね。」

「どっかそのうち旅行に行こう。セヴィラかトレドの方へ一度行きたいんだが。――」

真紀子は眉を上げた。

「セヴィラがいいわ。ね、行きましようよ。あたし、明日からでもいいわ。」

「クックで験べておこう。行くのならイタリアへでもいいが、とにかくパリ祭がすんでからだ。」

久慈はこう云って立ち上ると、何んの意味ともなく花瓶の薔薇の方へ近よっていって頭を跼めた。一度前に彼はこのような同じ動作をして薔薇をち切り、フランス流に語学教師のアンリエットの胸にさしたことがある。アンリエットは日本人専門の案内人もかねていたから、職業上間もなく次ぎから次ぎへと生徒を替え、今は久慈とも放れていたが、ときどき手紙だけは旅行先から来た。