Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
それはどういう理由かもう彼には分らなかったが、何んとなくそれは非常に見事な習慣だと思われ、自分が千鶴子の家と自分の家との二家の父母の許しを待つまで、君を愛すなどという言葉も千鶴子に使いたくないのも、実はただそれだけの分らぬ理由からだったとも思った。
ホテルへ着いてから二人はエレベーターの狭い箱の中に這入り、初めて鈍い電灯の下で顔を見合せた。千鶴子は雨に濡れた矢代の胸のボタンを爪で掻き掻き、ちょっと首を傾けた嬌奢な笑顔で何か云いたそうに唇を動かしたが、その間に箱は上まで昇ってしまった。
千鶴子の荷造りはほとんどもう出来上っているのと同じだった。ただこまごまとした物を纏めてトランクに詰めれば良かっただけだったが、それも千鶴子でなければ出来ぬ女の使用品ばかりだった。
「手伝いに来たのに何もないんだな。」
と矢代は手持無沙汰に立ったまま云った。
「たったこれだけ。もういいんですのよ。」
矢代はそれでも口を開けているスーツケースの蓋を膝で抑え留金をかけたり、古新聞をも一つのに詰めたりした。あまり重くなっては飛行機だから料金が高くなって困ると千鶴子の云うのに、古新聞は記念に良いものだからと矢代は云い張って無理に持たした。