Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
誰も異様な緊張で黙っている中で、南はまったく予期しなかった狼狽の色に変った。そして即座に出て来ない英語で、
「いや、これはつい忘れまして、荷物の底に入れていたものですから、――ベルリンでお土産に買ったものです。」
と詰り詰り弁解した。誰が見ても一番疑われる器具の双眼鏡に封印し忘れた手落ちなど、手落ちとしてはあまり乱暴すぎたものだった。しかし、結局は、誰でも気がつきそうなものまで忘れた南のその頓馬な失策が、却って逆に検査官の疑いを解いたらしかった。検査官は顔を和らげると双眼鏡まで南に返してあっけなく荷物を通してしまった。
「サンキュウ、サンキュウ。」
相好を崩して乱された荷物をあたふたスーツに詰め込んでいる南の傍で、次ぎが矢代の番になった。彼のは異状もなくすぐ通った。その次ぎはナチスの外交官で、このときは荷物が通ったが所持金を内ポケットから見せるとき、旅券に記入のない日本の百円紙幣を二枚一緒に出して見せた。
「これは預っときます。」
検査官は簡単に紙幣を取り上げた。これにはドイツ人も意外だったらしく、暫くぼんやりしていてから周章てて、
「それは僕が東京へ着いてから、すぐ入用のお金です。