Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
団十郎好みの褐色の暖簾の下った寿司屋へ入り、矢代は庭の隅の方に腰かけると、漆塗の黒い寿司台に電球の傘が映っていた。ジャパンという英語は漆という意味だということを、ふと矢代は思い出した。そして、黒塗に映えた鮪の鮮やかな濡れ色から視線が離れず、テーブルに凭れて初めて、彼はいつも一番舌の上に乗せたかったのは、この色だったと思った。
鮪が出たとき、彼は箸でとるより指で摘んでみたくなつてつづけて幾つも口に入れてまた皿を変えた。身体の底に重く溜ってゆく寿司の量が、争われず自分の肉となり、血となる確かな腹応えを感じさせた。下を見るとここにも、靴まで濡れそうな打ち水がしてあった。「ははア、水だな。」と彼は云った。
内庭に清水を撒く国は日本以外に見られなかったのを彼は思い出した。そして、山から谷から流れ出る、豊かな水の拭き潔めてゆくその隅隅の清らかさを想像して、自然にそこから生れて来た肉体や、建物や食物の好みが、およそ他の国のものとは違う、緻密な感覚で清められて来たことなど、瞬間のうちに彼には頷けた。しかし、今は矢代はそんなことも、特に考えようとしたのではなかった。