Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
「絵は見たか?」とまた田村は、何よりそこを自分は一番希んでいるのだと云いたげな様子で訊ねた。
「見た。」と一こと云うと矢代は黙った。
「どうだった絵は?」
「意外に下手な絵の多いのにびっくりしたね。」
「そうだろうな。」
田村は、お前のことならと云う意味も含めて、もし自分ならと、云いたいところも、歯痒ゆそうに微笑にまぎらせて、その口に猪口をあてた。矢代はこれから会うものごとに、みな誰も田村のように同情を自分に示すさまがありありと感じられ、自分にとって一番難しいのは、何んといっても日本の内部のこの外国語を習っている神官たちだと、直覚するのだった。そして、それも所詮は他人のことではなく、自分自身のことだった。ああ、自分のことだ、みんな。――これは難しい、実に云いがたく難しい、実生活の犇めきよせた世界の中へいよいよ自分も帰って来たものだと思った。
窓から外に眼を向けると、泡を集めたようにどろりとしたメタン瓦斯の漂う運河をへだて、互に肩を凭り合せて傾いた木造の危険な家並のところどころに、灯火を透した蚊帳の青さが、夏の名残りを見せていた。矢代はふと、大理石に囲まれたベニスの運河を思い出し、セーヌ河の重厚な欄壁の間を流れる水を思い泛べた。