Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
宿へ着いてから欄干よりのテーブルに彼は千鶴子と対い合った。槙三の姿の見えないのを訊ねると、娯楽室へ行ったということだった。昨日から初めて二人きりになった今、理由もなく矢代は胸騒ぎを覚えて山を見つづけた。千鶴子も同じように黙っていた。
宿の後の山が谷を越し向うの山の頂近くまで影を投げていて、雪を冠った雑木が睫のように刺さった裾の方に鉄橋が見えていた。
「あたしたち、明日の朝帰ろうと思いますの。」
と千鶴子はまだ山を見たまま低く云った。
「じゃ、そろそろ僕も帰るかな。」
「あなたお帰りになったら、田辺侯爵に一度お会いになって下さらないかしら。」
千鶴子はどういうものか、云い難くげに顔を赧らめて矢代を見た。
「会いますが、それはまたどうしてです。」
「どうってこともないの。ただね――」
千鶴子は一寸言葉を切った。
「あたしのお母さん、あなたとお会いしたことないものだから、やはり、どなたか中に立っていただいといた方がと思って、侯爵にお頼みしたらと、そんなこと、あたしひとりで考えたの。でも、あなたもしお嫌いなら、いいんですのよ。」
「そういうことならいつでもお会いします。