Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
「でも、それは道徳よ。」
と突然藤尾みち子は別れた前の夫の遊部を見て云った。何かその声の中には遊部の無礼を憤る短く張った声が籠っていた。
遊部夫妻の過去のいきさつを知っているものらは一瞬どっと笑い出した。矢代はこの一家庭もルネッサンスの中核体に触れ飛び散ったひと群だったのかと、初めて知って二人を顧みた。
白い卓布の上に並んだ客たちの表情は、遊部とみち子のもつれかかった気持ちを享けて、暫くは両方に別れたままだった。そこへ女中が薄切りのスモーキングの鮭を持って顕れ、空いた皿と取り替えた。光沢のある越州の壺に似合った冬薔薇の華やいだ向うで由吉は無造作に鮭を食べたその途端、「あッ、これは見事だ。」と云って感嘆した。一同危く道徳派と科学派とに入り乱れて混乱に陥ち入りそうなところだったので、こういう由吉の嘆声は、思いがけない逆転を起して客たちの視線を皿の鮭の上によせ集めた。
「侯爵、今夜のコックはただ者じゃないですな。」
由吉に云われて田辺侯爵はかすかに笑っただけだった。二人を見ていた矢代は、どことなく微妙な音を発した美しさを感じ気持良かった。由吉は鮭を食べ終ると手帳の紙片をひき裂き、コックに手渡す今夜の礼を書きかけたが、侯爵の方へ一寸延びて、「日本人?」