Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
しかし、速水は日ごろの自分の考えに何事か触れるものがあるらしく、
「それはただ過去のキリストの形骸を信じているからさ。むかし恋しい銀座の柳だ。」と彼は面白そうに笑い出した。
「キリストに過去とか未来とかはないだろう。そこがキリストの透明な豪さというものじゃないか。」
「いや、僕は革新派だからね。そうは思わないんだ。誰が何んと云おうと、革新派の主張だけは僕は変らん。」
若い外交官であるだけに速水の言は、人人の蔑視を突き退け何か期するがようにひとり頷く強さがあった。一同のものはまた黙ったが、それぞれ裡に考え湧くものの続出して来た混乱のしるしのある沈黙だった。
「そこでヘルンのことに戻りますが、ヘルンというこの外国人は、ギリシアやローマの一番健康なころの精神が、地球上のどこに残っているかを自分は探し廻ったというのです。そして、どこからもその片鱗も夢みることさえ出来なくって、絶望の揚句ふらりと日本へやって来たところが、思いがけなく、ここがそれだと思ったというのです。そして、日本にそのまま居ついてしまったんですが、この夫人は、二百本持っているヘルンの煙管に、いちいち煙草をつめて喫わしてやって、最後の一本を喫い終ったころには、最初の一本にもうちゃんと、新しい煙草を詰めてやってあったというのです。