Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
まだついていない、もっとも斬新な、数学界に於ける華形として登場して来た射影幾何の部門に属するため、矢代がその幣帛の研究方法をどこから得て来たのか、訊ねて来てくれるようとの槙三からの依頼だった。千鶴子はこんな難しい話を云いがたそうに矢代に話しているとき、
「一寸、そこのあなたたちのお話、聞き捨てにならないな、何んです。」
と、今まで二人の話を聞いていなかった筈の男爵が、そう云って矢代の方に身を傾けよせて来た。がやがや話していた食卓の長い両側の列が、皆一斉に話をぴたりと停めると、千鶴子と矢代の方を振り向いた。槙三ら数学者たちといい、ここの外国帰りらといい矢代は、彼らの注目を受けるや、世界の全体が急にこちらを向き返って来たようで自然と緊張を覚え、ぼっと暖く光りのさしのぼって来るのを感じるのだった。
「あなたは帰ってくるなりお祭りの話なんかされるもんだから、つい僕も、いろいろ思いあたることが出来てきて、難しいことになったのですよ。」
その場は矢代も平尾男爵にそう云ったまま笑った。
「何んだい君、今のその話は?」
東野も千鶴子と矢代とのひそひそ話を、前から幾らか耳にしていたと見えて、そう訊ねた。