Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

何となくそうしているうちに、二人の気持ちは一層動き停って固苦しくなるのを矢代は覚えると、ベンチを立って去ろうかと思った。しかし、考えてみれば外国を歩いている以上、こんな所を千鶴子と二人で眼にすることはいつかあるにちがいないので、一度はここも通らなければと、向うの男女の顔の放れるのを待つようにまたじっと眺めつづけて坐っていた。

「あなた、あんなところをそんなに御覧にならないでよ、さア、行きましょう。」

と千鶴子は顔を赤らめて立ち上った。しかし、矢代は動かなかった。彼は千鶴子を心の中で自分の顔を合せる対象だと一度はマルセーユで感じたのを思い起すと、あのとき騒いだ自分の心の自然の結末をここでゆっくり一度清めてしまいたいと思うのだった。

「まア、ここへ腰かけていなさいよ。美しいな。」

と矢代は立っている千鶴子に云った。芝生の中に降りた一羽の鳩が胸毛で葉先きを擦り割りながらよちよち二人の方へよって来た。恍惚として動かない前方の男女の身体へ杏の花弁が絶えず舞い落ちた。

見ているうちに矢代も馬鹿らしい光景だとは思えなくなって来て、これは驚くべきほど美しい情景だと羨ましささえ感じて来るのだった。