Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

Lisez 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) de 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 306 caractères · 300 écrans

Aozora Bunko

「もしもし、あなたは松井さんですか。藤村さんはおいでですか」といってきくと、いつでも、その松井の家の定まった返事の通りに、婢衆は、

「藤村さんは今留守どす」という。

これまでとても、彼女が家にいてさえ一応はそんな返事をするのが癖なのであったが札が取れているのでは、留守であることは問わずとも知れている。それでも、女がそこの家にいる時分と同じように、いつもの「留守どす」で、返事を済ませている。もちろんこちらが誰であるか、知っているはずもないのだが、もし知れていたならば、一層不愛想な返事をしたかも知れぬ。私は、ひたすら紙よりも薄い人情の冷たさを、夜の冷気とともに身に沁みて感じながら、重ねて委しいことを訊こうとする気力も抜けてしまい、胸の中が空洞になったような心持で、足の踏み度も覚えず、そのまま喪然として電車に乗り、上京の方の宿に戻ってきた。とてもその勢いで取って返し、その家に訪ねていって、名札の取れて、もういなくなってしまった事情を訊ねてみる力は失くなってしまったのである。そして足かけ五年の間真実死ぬほど思いつめたあげくが、こんなことになってしまったと思うと、何より自分という者が可哀そうになって来て、冬の夜の寒い電車の中にじっと腰を掛けていてさえ、ひとりでに悲しい涙が流れ出た。