Classiques japonais avec furigana
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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Lisez 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) de 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 306 caractères · 300 écrans
その金を返さんことには、あんたはん松井さんかて、あの娘を廃めさしてくりゃはりゃしまへんがな」真顔でいう。
「その借金を五百五十円今度親類から出してもらったのだ」傍の男が後を受け取って言う。
私には、どうも、はっきり腑に落ちぬ。
「へえ?……しかし、この間私が松井へ行って、お繁さんに会って訊いた時には、そんなに借金はもうなさそうな口ぶりであったが」
「あの人何も知らはりゃしまへん。ないどころか、まだ仰山あって、あの娘はそんな病気になる……親一人、子ひとりの私の身になったら、あんたはん、泣くに泣かりゃしまへんがな。それで南山城の旧い親類に頼んで、証文書いて、それだけの金を今度貸してもろうたのどす」母親は、傍の男にも訴え顔にいう。
私は、黙ってそれを聴いていたが、なるほど彼女たちの先祖はもと府下の南山城の大河原というところであったとは、自分が女を知って間もない時分から聞いていることであった。その大河原というのは関西線の木津川の渓流に臨んだ、山間の一駅で、その辺の山水は私のつとに最も好んでいるところで、自分の愛する女の先祖の地が、あんな景色の好いところであるかと思うと、一層その辺の風景が懐かしい物に思われていたのであった。