Classiques japonais avec furigana
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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Lisez 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) de 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 306 caractères · 300 écrans
大変遅いじゃないか」
「ええ、大変遅うございますねえ、大方活動へでも行ったんでしょう」
「そうか。じゃ僕はまた来ます。お留守にお邪魔しました」
「まあ好いでしょう。お宮ちゃんがいないからって、そう早く帰らなくってもいいでしょう。今におかみさんも帰って来ますよ」
そこを出ると私は心を空にして有馬学校の裏に急いだ。二月も末になると、もう何となく春の宵めいた暖かい夜風が頬をなでて、曇りがちな浮気な空から大粒な雨がぽたりぽたりと顔に降りかかった。
その待合にいって、私の名をいわずにそっとお宮を下に呼んでもらった。
「便処にゆくことにしてこちらにまいりますから、どうぞ処室でしばらくお待ち下さいまし」
物馴れた水戸訛りの主婦が出て来て私を階下の奥まった座敷に通した。
間もなくお宮は酒に赤く火照った頬を抑えながら入って来た。
「あッ、あなたですか。私だれかと思った」
と入りながらちょっと笑顔を見せたが、すぐ不貞たような面をして、
「私酒に酔った」独語のようにいって頬をなでている。
「だれだえ? お客は?」軽く訊いて見た。
「うむ、誰れでもないの」
「誰れでもないわけはない。だれだろう。