Classiques japonais avec furigana
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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Lisez 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) de 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 306 caractères · 300 écrans
黒髪
一
……その女は、私の、これまでに数知れぬほど見た女の中で一番気に入った女であった。どういうところが、そんなら、気に入ったかと訊ねられても一々口に出して説明することは、むずかしい。が、何よりも私の気に入ったのは、口のききよう、起居振舞いなどの、わざとらしくなく物静かなことであった。そして、生まれながら、どこから見ても京の女であった。もっとも京の女と言えば、どこか顔に締りのない感じのするのが多いものだが、その女は眉目の辺が引き締っていて、口元などもしばしば彼地の女にあるように弛んだ形をしておらず、色の白い、夏になると、それが一層白くなって、じっとり汗ばんだ皮膚の色が、ひとりでに淡紅色を呈して、いやに厚化粧を売り物にしているあちらの女に似ず、常に白粉などを用いぬのが自慢というほどでもなかったけれど……彼女は、そんな気どりなどは少しもなかったから……多くの女のする、手に暇さえあれば懐中から鏡を出して覗いたり、鬢をなおしたり、または紙白粉で顔を拭くとかいったようなことは、ついぞなく、気持ちのさっぱりとした、何事にでも内輪な、どちらかというと色気の乏しいと言ってもいいくらいの女であった。