Classiques japonais avec furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lisez 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 149 813 caractères · 302 écrans
しかし、ゆうべの書記の話を思出すと、線路番人のことが眼前(めのまえ)に活きて来て、譬えようもない嫉妬(しっと)が湧上る。源は藁草履と言われる程の醜男子(ぶおとこ)ですから、一通りの焼手(やきて)ではないのです。編笠越しに秋の光のさし入ったお隅の横顔を見れば、見るほど嫉妬は憐みよりも強くなるばかりでした。
「お隅、お前は何をそんなに考えているんだい」
「何も考えておりゃせんよ」
「定めしお前は己を恨んでいるだろう。己に言わせると、こっちからお前を恨むことがある」
「何を私は貴方に恨まれることが有りやすえ」
と突込むように言われて、源はもう憤然(むっ)とする。さすがにそれとは言淀(よど)んで、すこし口唇を震わせておりましたが、やがて石の上に腰を掛けて、草鞋の紐(ひも)を結直しながら、書記から聞いた一伍一什(いちぶしじゅう)を話し出した。こう打開(ぶちま)けて罪人の旧悪を言立てるような調子に出られては、お隅も平気でいられません。見る見るお隅の顔色が変って来て、「線路の番人」と図星を指(さ)された時は、耳の根元から襟首(えりくび)までも真紅にしました。邪推深い目付で窺(うかが)い澄していた源のことですから、お隅の顔の紅くなったのが読めすぎる位読めて、もう嫉(ねたま)しいで胸一ぱいになる。