Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 201 612 caractères · 405 écrans
や筆立や硯のたぐいが散乱しているなかに、宗匠の其月はすこし斜めに仰向けに倒れていた。かれの半身はなま血に塗れて、そこらに散っている俳諧の巻までも蘇枋染めにしているので、惣八は腰がぬけるほどに驚いた。かれは這うように表へ逃げ出して、近所の人を呼び立てた。こういうわけで、惣八は第一の発見者である係り合いから、町内の自身番に留められていろいろの詮議をうけたが、彼はこの以外にはなんにも知らないと申し立てた。
この椿事が夜なかに起ったのでないのは、主人の部屋にも女中部屋にも寝床が敷いてないのを見ても察せられた。其月は机のまえに坐って、朱筆を持って俳諧の巻の点をしているところを、うしろからそっと忍び寄って、刃物でその喉を斬った。おどろいて振り向くところを、更にその頸筋を斬ったらしい。其月の死にざまは先ずそれで大抵わかったが、お葉はどうして死んだのか、ちょっと見当がつかなかった。自分で身を投げたのか、他人に投げ込まれたのか、それすらも判らなかった。池から引き揚げられた彼女の死骸には傷のあとも見いだされなかった。
家内に紛失物もないらしいのを見ると、この惨劇が物取りでないこともほぼ想像された。