Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 831 caractères · 396 écrans

Aozora Bunko

その砂を顔に浴びて、男も女もあわてて両袖を掩ったので、繋がっている手と手が自然に離れた。長三郎の持っている提灯の火もあやうく吹き消されそうになった。

その風のうちに、お冬はなんの音を聞いたのか、俄かにうしろを見返ったかと思うと、長三郎のそばを颯と離れて、橋を南へむかって飛鳥のごとくに駈け去った。取り残された長三郎は呆気に取られて、再びそれを追い捕える気力もなく、唯ぼんやりと其のゆくえを眺めていると、やがて草履の音が北の方から近づいて、頬かむりをした男がうしろから彼に声をかけた。

「あなたはあの女とお知合いでございますか」

相手が何者か判らないので、長三郎は突っ立ったまま睨んでいると、男は頬かむりの手拭を取って丁寧に会釈した。

「わたくしは神田の三河町に居りまして、お上の御用を勤めている吉五郎という者でございます。失礼ながらあなたは……」

長三郎も黙っていられなくなった。

「わたしは音羽の御賄屋敷にいる瓜生長三郎……」

「はあ、瓜生さんの御子息でございましたか」

丁度いい人に出逢ったと云うように、吉五郎は馴れなれしく摺り寄って来た。

「あの女は音羽の火の番の娘じゃございませんか」