Classiques japonais avec furigana
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おうかをよめるく
杉田久女随筆集
杉田 久女
Lisez 杉田久女随筆集 (おうかをよめるく) de 杉田 久女 (すぎたひさじょ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 273 caractères · 33 écrans
信はとうとうあの異境で死んでしまった。
五寸四角位な白木の箱におさめられた遺骨は白の寒冷紗につつまれて、仏壇もない、白木の棚の上に安置された。信のおもちゃや洋服は皆棺に入れて一処にやいてしまった。
せめて氷があったら心のこりはないのに……
と父母を嘆かしめた。その氷は信光の死後漸く台南からトロで届いた。信の基隆で買ったあの汽車のおもちゃもサーベルも、あとから来た荷物の中から出て、また新らしく皆に追懐の涙を流させた。
父は思出のたねとなるからとて、信のつねに着ていた、弁慶縞のキモノも水平服も帽もすべて眼につくものは皆焼き捨ててそこいらには信の遺物は何もない様にしてしまった。鍾愛おかなかった末子の死は、一家をどれ程悲嘆せしめたかわからなかった。
姉と私とは毎日草花をとって来ては信の前へさし、バナナや、竜眼肉やスーヤー(果物)や、お菓子でも何でも皆信へおそなえした。
父も母も多く無言で、母は外出などすこしもせず看護りつかれて、半病人の様なあおい顔をしつつわずかに私達の世話をしていた。
土人の子の十五六のを召使っていたけれども友達はなし父母は悲しみに浸ってい、弟はなし、私と姉とは、竜眼の樹かげであそぶにも、学校へ行くにも門先へ出るにも姉妹キッと手をつないで一緒であった。