Classiques japonais avec furigana
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くりのはなのさくころ
栗の花の咲くころ
佐左木 俊郎
Lisez 栗の花の咲くころ (くりのはなのさくころ) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 440 caractères · 14 écrans
「百円。百円でいいかね。」
「売り切りじゃねえですよ。」
「承知です。」
頭をさげるようにしながら米問屋の主人は店の方へ立って行った。
「伜を一人、東京へ勉強に出して置くと、金がかかりますでね。私もそのためにあ、先祖から伝わっている刀まで手放さねえなんねえんでね。今はこうして半分だけ借りて行っても、すぐ又はあ、伜から金が要るって言って来れば、残りの半分を借りて、売り切りになるかも知れませんで。」
嘉三郎は髭を捻りながらそう米問屋の主人の背後に語りかけた。
「そりゃあ、東京へなど勉強に出して置いたら、随分とかかりましょうなあ。」
そんな風に言いながら、米問屋の主人は幾枚かの紙幣を握って、すぐ戻って来た。そしてその紙幣を、嘉三郎の前へ置いて序にその横から細長い包みを取った。嘉三郎は、自分の前に置かれた何枚かの紙幣を、数えても見ずに袂の中へ押し込んだ。
「立派なものだなあ。」
鞘を払って刀身を凝っと眺めながら米問屋の主人は言った。
「何ぶんにも大業物ですからな。」
「嘉三郎さん! 今日中に送るのなら、早く行かないと、郵便局が閉まりますで。待っていなさるんだべが……」