Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 148 519 caractères · 296 écrans
虎之助は夜具の上に坐り、小さな膝をきちんとそろえて、姉といっしょに挨拶をした。
「どうした坊、まだよくないか」
甲斐はそう云いながら坐った。
「のぞが痛い」虎之助は顎をあげて、自分の喉を指さしながら云った。声はひどくしゃがれていたし、あげた顎は痩せて、尖ってみえた。
甲斐は眼で微笑しながら、頷いた。その表情には、微笑しているにもかかわらず、するどい苦痛の色がうかび、しかしすぐに消えた。
「そうか、喉が痛いか、私も喉が痛い」と甲斐は云った、「坊は喉が痛いと、泣くか」
「――泣かない」
虎之助は横眼で姉を見た。甲斐は微笑した。唇のあいだから、白いきれいな歯が見え、左の頬に竪皺がよった。
「それはえらいな、おじさんも泣かないが、あんまり痛いと、泣きたいと思うことがある、それでも、男は泣いてはおかしいから、がまんして泣かない、坊もそうか」
虎之助はまた横眼で姉を見た。そして、膝の上で両手の指を動かしながら、ごくっと頷いた。母親がいたら、あまえて泣く年だ。と甲斐は思った。麻疹の予後が悪く、ながびいて、躯のちからも弱っている、苦しいとき、泣かずにがまんすることは、辛いだろう。