Classiques japonais avec furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lisez 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 492 caractères · 156 écrans
春は馬車に乗って
春は馬車に乗って
横光利一
海浜の松が凩(こがらし)に鳴り始めた。庭の片隅(かたすみ)で一叢(ひとむら)の小さなダリヤが縮んでいった。
彼は妻の寝ている寝台の傍(そば)から、泉水の中の鈍い亀の姿を眺(なが)めていた。亀が泳ぐと、水面から輝(て)り返された明るい水影が、乾いた石の上で揺れていた。
「まアね、あなた、あの松の葉がこの頃それは綺麗(き れい)に光るのよ」と妻は云った。
「お前は松の木を見ていたんだな」
「ええ」
「俺は亀を見てたんだ」
二人はまたそのまま黙り出そうとした。
「お前はそこで長い間寝ていて、お前の感想は、たった松の葉が美しく光ると云うことだけなのか」
「ええ、だって、あたし、もう何も考えないことにしているの」
「人間は何も考えないで寝ていられる筈(はず)がない」
「そりゃ考えることは考えるわ。あたし、早くよくなって、シャッシャッと井戸で洗濯(せんたく)がしたくってならないの」
「洗濯がしたい?」
彼はこの意想外の妻の慾望に笑い出した。
「お前はおかしな奴だね。俺(おれ)に長い間苦労をかけておいて、洗濯がしたいとは変った奴だ」
「でも、あんなに丈夫な時が羨(うらや)ましいの。