Classiques japonais avec furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lisez 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 724 caractères · 355 écrans
「君らは、血書を出す時、ストライキは絶対にやらんという約束をしたのを、もう忘れたのか。」
「誰がそんな約束をしたんだ。僕らは知らんぞ。」
誰かが廊下の方から言った。
「君は誰だ。」
と、新賀は声のした方にじっと眼をすえ、
「この会は校友会の委員会だ。だから僕は委員諸君にたずねている。委員以外のものはだまっていてくれたまえ。」
廊下の方にぶつぶつ言う声がきこえ、室内もいくらかざわめき立った。新賀は、しかし、平然として、
「どうだ、委員諸君、君らは約束を忘れたのか。」
誰も答えるものがない。沈默の中にみんなの眼だけがやたらに動いた。
とりわけ動いたのは馬田の眼だった。彼は新賀が立ち上った瞬間から、冷笑するような、それでいて変に落ちつかない眼をして、あちらこちらを見まわしていたが、沈默がつづくにつれ、それが次第にはげしくなり、しまいには、顔をねじ向けて廊下の仲間の一団を見た。そして何かうなずくような恰好をしたあと、わざとのように天井を見、いかにもはぐらかすような調子で言った。
「そんな約束なんか、どうだっていいじゃないか。」
「ふざけるな!」
と、新賀は一喝して馬田をねめつけた。