Classiques japonais avec furigana
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うたまろざんげ
歌麿懺悔
邦枝 完二
Lisez 歌麿懺悔 (うたまろざんげ) de 邦枝 完二 (くにえだかんじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 396 caractères · 23 écrans
大方河岸から一筋に来たのであろう。おもてには威勢のいい鰯売が、江戸中へ響けとばかり、洗ったような声を振り立てていた。
二
今まで五重塔の九輪に、最後の光を残していた夕陽が、いつの間にやら消え失せてしまうと、あれほど人の行き来に賑わってた浅草も、たちまち木の下闇の底気味悪いばかりに陰を濃くして、襟を吹く秋風のみが、いたずらに冷々と肌を撫でて行った。
燃えるような眸で、馬道裏の、路地の角に在る柳の下に佇ったのは、丈の高い歌麿と、小男の亀吉だった。亀吉は麻の葉の手拭で、頬冠りをしていた。
「じゃア師匠、夢にもあっしの知合だなんてことは、いっちアいけやせんぜ。どこまでも笊屋の寅に聞いて来た、ということにしておくんなさらなきゃ。――」
「安心しねえ。お前のような弱虫の名前を出しちゃ、こっちの辱ンならア」
「ちぇッ、面白くもねえ。もとはといやア、あっしが負けて来たばっかりに、師匠の出幕になったんじゃござんせんか」
「いいから置いときねえ。敵はとってやる」
「長屋は奥から三軒目ですぜ」
「合点だ。名前はお近。――」
「おっと師匠、莨入が落ちやす」
が、歌麿はもう二三歩、路地の溝板を、力強く踏んでいた。