Classiques japonais avec furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lisez 武蔵野 (わすれえぬひとびと) de 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 94 018 caractères · 192 écrans
その次の夜もまた詩人は積みし落ち葉の一つを燃かしむれば、男星女星もまた空より下りて昨夜のごとく語りき。かくて土曜の夜まで、夜々詩人の庭より煙たち、夜ふくれば水色の光と紅の光と相並びてこの庭に下れど、詩人は少しもこれを知ることなし。
七つの落ち葉の山、六つまで焼きて土曜日の夜はただ一つを余しぬ。この一つより立つ煙ほそぼそと天にのぼれば、淡紅色の霞につつまれて乙女の星先に立ち静かに庭に下れり。詩人が庭のたき火も今夜をかぎりなれば残り惜しく二人は語り、さて帰るさ、庭の主人に一語の礼なくてあるべからずと、打ち連れて詩人の室に入れば、浮世のほかなる尊き顔の色のわかわかしく、罪なき眠りに入れる詩人が寝顔を二人はしばし見とれぬ。枕辺近く取り乱しあるは国々の詩集なり。その一つ開きしままに置かれ、西詩「わが心高原にあり」ちょう詩のところ出でてその中の
『いざさらば雪を戴く高峰』
なる一句赤き線ひかれぬ。乙女の星はこれを見て早くも露の涙うかべ、年わかき君の心のけだかきことよと言い、さて何事か詩人の耳に口寄せて私語き、私語きおわれば恋人たち相顧みて打ちえみつ、詩人の優しき頬にかわるがわる接吻して、安けく眠りたまえと言い言い出で去りたり。