Classiques japonais avec furigana
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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
Lisez 母子叙情 (ぼしじょじょう) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 77 355 caractères · 153 écrans
さっきから、かの女の瞳を揶揄するように陽の反射の斑点が、マントルピースの上の肖像画の肩のあたりにきろきろして、かの女の視線をうるさがらしていた。窓外の一本太い竹煮草の広葉に当った夕陽から来るものらしかった。かの女はそのきろきろする斑点を意固地に見据えて、ついでに肖像画の全貌をも眺め取った。幸い陽の斑点は光度が薄かったので、肖像画の主人公の面影を見て取ることが出来た。金モールの大礼服をつけた額の高い、鼻が俊敏に秀でている禿齢の紳士であった。フランス髭を両顎近くまで太く捻っているが、規矩男の面立ちにそっくりだった。
かの女はつと立ち上り、その大額面の下に立ってやや小腰をかがめ、
「これ、規矩男さんの、おとうさまでいらっしゃいましょうか」と云った。
釣り込まれたようにかの女のそばへ寄って来て、思わず並んで額面を見上げた夫人は、無防禦な声で、
「はあ」と云ったが、次にはもう意志を蓄えている声で、「これはあんまりよく似ちゃおりません。少し老けております」
と云った。規矩男から彼の父親の晩年の老耄さ加減を聞いて知っているかの女は、夫人が言訳しているなと思った。年齢に大差ある結婚を、夫人がまだ身に沁みて飽き足らず思っているのを感じた。