Classiques japonais avec furigana
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ははおや
母親
若杉 鳥子
Lisez 母親 (ははおや) de 若杉 鳥子 (わかすぎとりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 750 caractères · 16 écrans
母親が聴き耳を立てていると、みを子は下駄を突っかけて外へ出たようだった。そして十分程経ってから戻って来た。母親にはその十分がひどく長く感じられた。
「あの山崎とかって人かえ?」
母親はその青年が始めて訪ねて来た時名を覚えていた。
「ん……」
みを子は下を向いて頷いた。すると、今度は兄がきいた。
「その山崎って奴、何だい?」
みを子が黙っていると、露骨に憎悪を漲(みなぎ)らして、
「そいつがその…………お前たちの指導者だっていうんかね。」
わざと冷笑的にいった。
みを子はムッとしたが黙っていた。
兄はある製作所の木版工の中から、優秀な技術者として抜擢され、現在では印刷局の鐫工(せんこう)に雇われている。従って、この名人気質をぶらさげている彼と、みを子はどうしてもうまく行かなかった。そればかりでなく、職工であって、同時に月給取りである彼は、青年労働者の生活がどうすればよくなる――なんて、初歩的なことすら少しも考えはしなかった。しかし、それでいながら彼は、ブル新聞に現れた左翼の運動の記事を熱心に読む、そして無暗に受け入れて兎や角いう。
「山崎って、どんな男か知らないがね、お前たちみたいな女事務員や、百貨店の売子なんていう街頭分子なんて組織して一体どうしようていうんだい……」